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シンクライアントとは? リモートデスクトップサービスとの違いや導入のメリット・デメリット

リモートアクセス

業務効率化やセキュリティ強化が求められる現代のビジネスシーンにおいて、シンクライアントは、注目を集めるITソリューションのひとつです。特にリモートワークの普及や多様な働き方が求められる中で、その活用範囲は広がり続けています。

しかし、「シンクライアントとは何か」「リモートデスクトップサービスとどう違うのか」と疑問をもつ方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、シンクライアントの基本的な仕組みやリモートデスクトップサービスとの違いをわかりやすく解説します。

シンクライアントとは? リモートデスクトップサービスとの違い

シンクライアントとリモートデスクトップサービスには、どのような特徴があり、違いがあるのでしょうか。それぞれの違いをみていきましょう。

シンクライアントとは

シンクライアントとは、ユーザーの端末(クライアント)で最低限の機能だけを提供し、実際のデータ処理やアプリケーション実行はサーバー側で実行する仕組みのことです。「薄い」を意味する「Thin/シン」と、サービスを利用する側のコンピューターやソフトウェアを意味する「client/クライアント」を組み合わせた「軽量なクライアント」という意味を持つ言葉です。

シンクライアント端末は、基本的に画面表示や入力操作をするだけで、実際の計算処理やデータ保存はサーバー側で実施します。そのため、端末に高性能なハードウェアやストレージは必要ありません。

アプリケーションやOSはサーバー側にインストールされ、一元管理されます。端末はサーバーに接続して操作します。データもサーバーで一括管理されるため、情報漏洩のリスクが低減される点も魅力です。社外からも安全に業務環境へアクセスできることから、テレワークに適しています。

リモートデスクトップサービスとは

リモートデスクトップサービスはシンクライアントの一種で、離れた場所にあるコンピューターやサーバーにネットワーク経由で接続し、その環境を操作する仕組みのことです。リモートデスクトップサービスを使用すると、接続先のPCやサーバーの画面をリアルタイムで表示しながら操作できます。

計算やデータ処理は接続先で実行され、クライアントデバイス(手元の端末)は中継する役割を担います。実際に作業するデスクトップ環境はすべてサーバー側に存在するため、クライアントデバイスには作業に関連するデータが保存されません。

また、リモートデスクトップサービスでは、1台のサーバーOSがホストとなり、複数のユーザーが同時に接続して作業できます。既存の物理PCやサーバーを活用できるため、新たにITインフラを構築する必要がなく、初期投資が抑えられる点が大きな魅力です。

シンクライアントの種類

シンクライアントの実行方式は、大きく分けて「ネットブート型」と「画面転送型」の2種類あります。

ネットブート型

「ブート」とは、起動を意味する言葉です。クライアント端末を起動(ブート)する際に、ネットワークを通じてサーバー上のOSイメージをダウンロードする形式が「ネットブート型」です。

このOSイメージには、必要なアプリケーションや設定が含まれており、端末はそれを元に動作します。一度OSイメージがダウンロードされると、通常のPCとほぼ同じ操作性で利用可能です。

注意したいのは、大容量ネットワークが必要な点です。OSイメージのデータ量が大きく、ダウンロードに耐える大容量かつ高速なネットワークが求められます。ネットワークが遅い場合、端末の起動に時間がかかる問題があります。

また、複数のOSが必要な場合、それぞれに対応したOSイメージを準備する必要があり、管理工数が増える可能性がある点にも留意が必要です。

画像転送型

端末の画面に表示される情報(画像)を、サーバーからネットワーク経由で転送して表示する方式が「画像転送型」です。この方式では、サーバーでアプリケーションやデータを実行し、その結果を画像として端末に送信します。

端末側では、画像を受信し、表示する役割を担いますが、実際の処理はすべてサーバー側で行われます。端末自体は画面を表示するだけの役割を担うため、クライアント端末は性能が低くても問題ありません。

画像転送型には、さらに3つの種類に分けられます。以降でそれぞれの特徴について解説します。

ブレードPC型

各クライアント端末が個別にブレードPCを占有して使用する方式です。この方式では、ブレードPCが必要なハードウェア(CPU、メモリ、ハードディスクなど)を1つの基盤(ブレード)に集約しており、クライアント端末はネットワーク経由でそれぞれのブレードPCに接続します。

ユーザーごとに専用のブレードPCを割り当てるため、高いスペックが求められる業務やアプリケーションにも対応可能です。特に、負荷の大きいアプリケーション(CADなど)を使用する場合に適しています。

ただし、クライアント端末ごとに専用のブレードPCを用意する必要があるため、初期コストが高くなる点には注意が必要です。

サーバーベース型

サーバーベース型は、複数の端末で1台のサーバー、同一のデスクトップ環境を共有する方式です。サーバーが高性能でなくても運用できるため、比較的低コストでシステムを構築できます。また、全ユーザーで同一のアプリケーション環境を共有するため、管理が簡単になる点もメリットです。

一方で、ユーザーごとに異なるデスクトップ環境を提供することはできず、個別の設定やカスタマイズが難しい点はデメリットです。

デスクトップ仮想化(VDI)型

サーバー上に構築された仮想デスクトップに対して、シンクライアント端末からアクセスする方式です。VDI型では、物理的なPCをユーザーごとに用意するのではなく、サーバー上で仮想マシンとしてデスクトップ環境を構築します。ユーザーはクライアント端末を使用して、この仮想デスクトップにアクセスします。

各ユーザーには専用の仮想デスクトップが割り当てられるため、個別の設定やアプリケーションを使用でき、他のユーザーに影響を与えることなく作業できる点が魅力です。一方で、アプリケーションのライセンス料が別途必要になったり、仮想環境の管理に手間がかかったりするデメリットがあります。

シンクライアントを導入するメリット・デメリット

シンクライアントを導入するか悩む場合は、メリット・デメリットを把握し、目的や予算を踏まえて検討してください。

メリット

シンクライアントを導入するメリットを3つ紹介します。

セキュリティ対策を強化できる

シンクライアント端末にはデータが保存されないため、万が一端末を紛失した場合でも情報漏洩の心配はありません。データはすべてサーバーに保存されており、端末自体が情報を保持しないため、物理的な端末の盗難や紛失による情報流出のリスクを防げます。

また、シンクライアント端末にはアプリケーションをインストールできないため、マルウェアが端末に直接感染することはありません。加えて、外部のUSBメモリなどのデバイスを接続してデータを保存することもできないため、外部媒体を経由してウイルスやマルウェアが感染するリスクを排除できます。

管理者・利用者の負担を減らせる

シンクライアントでは、アプリケーションやOSの管理がサーバー側で一括して行えるため、個別の端末を手作業で更新したり管理したりする必要がありません。

例えば、OSのバージョンアップやアプリケーションのインストール、パッチ適用などをサーバー上で実施すれば、全端末に自動的に反映されます。管理者は数多くの端末を個別に操作する手間から解放され、作業工数を大幅に削減できます。

ユーザーにとっても、アプリケーションのインストールやアップデートなどの作業が不要になる点は大きなメリットです。

BCP対策にもなる

BCP対策とは、災害などの緊急事態が起きても、被害を最小限に抑え事業を継続する仕組みづくりを指します。シンクライアントの大きな特徴は、業務に必要なデータやアプリケーションがサーバー側で管理されているため、利用者がどの端末を使っても同じ環境で作業できることです。端末が破損したり、紛失したりした場合でも、ユーザーは別の端末から同じデスクトップ環境にアクセスでき、業務の継続が可能です。

例えば、台風や地震などの自然災害が発生し、オフィスが使用できなくなった場合でも、データセンターに設置されたサーバーが無事であれば、リモート環境で業務を継続できます。

デメリット

ここでは、シンクライアントを導入するデメリットを2つ紹介します。

導入時にコストがかかる

シンクライアント端末自体は、一般的なPCよりも安価なもので十分ですが、専用のサーバー環境を構築する必要があるため、サーバーの購入費用やその維持管理費用が加わります。

また、デスクトップ仮想化(VDI)型を採用する場合は、OSやアプリケーションのインストール、制御ソフトウェアを整える必要があり、初期費用が高額になるケースがあります。

安定したネットワーク環境を用意する必要がある

シンクライアントの仕組みでは、クライアント端末とサーバーが常に通信を行い、サーバーで処理されたデータや画面情報が端末に送信されることで操作が可能となります。そのため、ネットワーク環境の品質が業務効率に大きな影響を与える点に注意が必要です。

ネットワーク速度が遅い場合や通信が不安定な場合、端末の画面表示や操作が遅延することがあります。また、ネットワークが一時的にでも停止すると、端末がサーバーに接続できなくなるため、業務が完全にストップしてしまいます。

シンクライアントの利便性を最大限に活用するためには、安定した通信環境を構築することが重要です。

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まとめ

シンクライアントは、ユーザーの端末で最低限の機能だけを提供し、実際のデータ処理やアプリケーション実行はサーバー側で実行する仕組みのことです。リモートデスクトップサービスはシンクライアントの一種で、離れた場所にあるコンピューターやサーバーにネットワーク経由で接続し、その環境を操作する仕組みを指します。

シンクライアントの導入は、業務効率化につながる点やセキュリティ対策の強化につながる点など、魅力的なメリットがあります。一方で、コスト面などでデメリットも存在するため、慎重に検討してみてください。

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