業務の棚卸のやり方とは? 実施するメリットも合わせて紹介
業務の棚卸は、企業が抱える業務を整理し、改善点を見つけ出すための基本的なプロセスです。特に働き方改革やDX推進が進む現代において、企業は現場の「ムリ・ムラ・ムダ」を省き、効率化を図ることが求められています。
今回は、業務の棚卸をするメリットややり方、棚卸を進める際のポイントについて紹介します。
業務の棚卸を実施するメリット
業務の棚卸とは、自社の業務を洗い出し、可視化した上で整理することです。整理したい業務によって、企業全体を対象にすることもあれば、部署内や社員ごとに業務を洗い出すケースもあります。
業務の棚卸によりどのような変化が期待できるのか、主なメリットを3つ取り上げます。
業務のムダを把握できる
業務の棚卸をすることで、どのタスクにどれくらいの工数がかかっているか、業務の現状を把握できます。これにより、必要のない工程が発生していないか、業務が重複していないか、重要性の低い業務に重点が置かれていないかなども明確にできます。
棚卸によってムダを可視化できるため、改善策を検討する足掛かりにもなるでしょう。ムダな工程の見直しにより、従業員の負担軽減にもつなげられます。
担当者ごとの業務量を可視化できる
業務内容を整理すれば、担当者別の業務量を把握できます。担当者が業務過多により無理をしていないか確認できるだけでなく、特定の業務が人的リソース不足に陥っていないかがわかります。
業務の棚卸は、人員配置の見直しや人員の補充など、人的リソースの最適化にも役立ちます。社員の適性を把握できていれば、得意分野への配置転換ができ、業務品質の向上につなげられます。
業務の標準化を図れる
業務の可視化ができていないと、特定の業務で属人化が進んでしまう可能性があります。属人化により特定の従業員しか作業ができない状態が続くと、その従業員の異動や離職が生じた場合に、引き継ぎがうまく進まなくなります。
業務の棚卸は、属人化している業務を洗い出す点でも有効です。担当者ごとの業務を整理することによって、属人化が進んでいる業務を把握できます。
属人化している業務は、特定の従業員以外でも取り組めるように標準化しましょう。マニュアルを作成するなど、誰でも業務に取り組める環境を整えることで業務の標準化を図れます。
業務の棚卸のやり方
業務の棚卸はどのように進めていくのか、手順を紹介します。
実施目的と範囲を定める
業務の棚卸をすることで何を実現したいのか、明確な目的を決めることが重要です。例えば、コスト削減をしたい、業務効率化を図りたいなど、棚卸によって実現したい目標を定めます。
組織規模によっては、一度にすべて実施するのは難しいケースもあります。無理なく行うためにも実施範囲を定めましょう。例えば、部門別や部署別、業務フローなどに分け、優先度の高さも考慮した上で対象の範囲を定めていきます。
業務内容を洗い出す
業務内容のヒアリングにより、業務内容を洗い出します。業務の管理者だけでなく、実際に業務に携わる担当者を対象とした調査も実施することで、より精度の高い洗い出しができます。
洗い出した業務を整理できるように、フォーマットを作成しておくことも大切です。フォーマットには業務内容を記入する欄のほか、下記の項目を設けると良いでしょう。
- 業務の種類
- 業務にかかる工数
- 業務の発生頻度
- 業務の難易度
- 担当者 など
管理者や担当者に作成したフォーマットへ記入をしてもらい、集計してリスト化しましょう。粒度の異なる業務を分けてリスト化することで、その後の調査がしやすくなります。
業務量調査を実施する
業務を洗い出したら、それぞれの業務にかかる時間、業務の頻度などの業務量を調査します。業務棚卸表のフォーマット作成時に必要な欄を設けておき、担当者に業務内容とまとめて記入してもらうと集計がスムーズです。
そのほか、モニタリングによって作業時間を調査する実測法やITツールから作業時間を抽出する方法もあります。
業務の棚卸で業務量も含めて調査をするのは、年間業務量や各業務で発生している作業時間を明確にできるためです。集計内容から、業務負荷や属人業務などを分析します。
業務効率化に向けた施策を検討する
洗い出した業務内容や業務量の分析結果から、業務内容にムダはないか、人員に偏りがないか、属人化が起きていないかなどの課題を見つけます。目的達成のために、どのように課題を改善すべきか改善策を検討しましょう。
一度に複数の業務を改善しようとすると、現場の混乱を招きかねないため、優先度の高い業務から改善するのがお勧めです。
業務の棚卸に関するポイント
業務の棚卸を実施する際のポイントを3つ紹介します。
定期的に情報を更新する
業務の棚卸は、一度実施して完了するのではなく、繰り返し取り組むようにしましょう。ツールの導入などによる業務フローの変化、人員の入れ替わりによる担当業務の変化などが生じる可能性があるためです。
業務の棚卸は定期的に実施して、その都度、課題を抽出してから改善策を検討して実行しましょう。改善策がうまくいったか効果検証するためには、PDCAサイクルを回すことも大切です。
フレームワークを活用する
業務の洗い出しや解決策の検討にはフレームワークを活用すると良いでしょう。業務の棚卸に役立つ主なフレームワークを3つ紹介します。
ECRS(イクルス)
ECRSは、改善点の洗い出しに使えるフレームワークです。Eliminate(排除)、Combine(結合)、Rearrange(再配置)、Simplify(単純化)から構成されます。不要な業務の洗い出し、複数の業務の結合、業務の入れ替え、業務やフローの簡素化を検討するのに役立ちます。
BPMN(ビジネスプロセスモデリング)
BPMNは「Business Process Modeling Notation」の略称です。日本語で「ビジネスプロセスモデル表記法」と呼ばれています。業務をフローチャートにより表現する手法で、業務の洗い出しに役立ちます。
BPMNの表記は国際基準で定められており、共通の記号を用いてフローチャートを作成します。ルールが定められているため、他部門に展開する場合や他部署の業務を把握したい場合にも便利です。
ロジックツリー
ロジックツリーは、ツリー構造を用いて問題を分析するフレームワークです。全体像の把握に役立つ要素分解ツリー、問題解決の手段を見つける問題解決ツリーなどがあります。ロジックツリーを用いるメリットは問題を深掘りできるほか、重要度を評価できることです。
ツールを活用する
業務の棚卸で改善すべき業務を洗い出したら、どのような方法で改善するか検討します。業務効率を高められるツールを導入するのも方法のひとつです。
ツールの導入は、誰がどのような業務を行っているか、業務がどこまで進んでいるかなど、業務の可視化にも役立ちます。
まとめ
業務に重複が見られる、特定のスタッフしか対応できない業務がある、業務が複雑化しているなど、業務に問題があるときは業務の棚卸を実施しましょう。
業務の棚卸により、現状の業務の洗い出しや問題点を可視化できるため、業務量の調整やリソースの振り分け、業務の標準化に役立ちます。
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