【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第95回 恵比寿の思い出 2021年9月22日配信

先週、お客様に会いに久し振りに恵比寿へ行った。
恵比寿の西口を歩きながら、昔のことを思い出していた。
そう、私は恵比寿に古き良き思い出があり、今日はそれを書こうと思う。

私が高校三年生のとき、学校で夏休みのアルバイト募集が貼り出された。
今ではあまりないようだが、昔は学校がアルバイト先をあっせんしてくれたのだ。

このコラムでもたびたび登場する南房総市(当時は千倉町)からほとんど外に出たことのない田舎者の私は、とにかく都会に行ってみたいと、アルバイトに応募することにした。

目を付けたのが恵比寿の昆布屋さん。住み込みで1か月働かせてくれるらしい。これなら交通費さえあれば何とかなりそうだ。それに恵比寿は山手線上にあり憧れの新宿にも近い。私はすっかりやる気になり、家に帰って両親に相談、というよりも決定事項を報告した次第だ。両親はすぐに「行きたいなら行ってこい」と交通費の心配をしてくれた。

結局、私の高校からは2名がこの昆布屋さんに行くことになり、初日の朝早く制服を着て電車で向かった。わくわくドキドキだったなぁ。

到着した恵比寿駅は、今のようなビル街ではなく、遠くが見渡せる広い町だった。昆布屋さんはヱビスビール工場の近くにあり、工場と宿舎があった。確か大きな煙突があったような記憶がある。

この夏休みのアルバイトは10名くらいいただろうか、あちこちから大学生と高校生が集まって来た。私達2人は同室、6畳くらいの畳の部屋をあてがわれた。

翌日から仕事だ。仕事は工場での袋詰めと配達の手伝い。月曜日から土曜日までしっかり働いた。とにかく丁寧にやったのを覚えている。朝昼晩の食事は食堂でみんな並んで食べた。献立はとても質素だったが、商品の塩昆布の切れっぱしをいつも出してくれた。その昆布は塩辛さがなく、本当に美味しくご飯が進み、ご飯をおかわりできるのはありがたかった。

今思えば、昔は白いご飯をたくさん食べることが幸せだったのだ。だからこういう味の良い日持ちする昆布や佃煮が重宝されたのだろう。今は、炭水化物を極力控えるのが普通だから、現在の若者に当時の食事を見せたら驚くだろうなぁ。

さて、1か月の間のエピソードをいくつか紹介しよう。

まず、仕事でうれしいのは配達だ。車で新宿の伊勢丹や小田急などのデパートに商品を納めに行くのだ。社員さんから声がかかると喜び勇んで、商品を車に運んだりしたものだ。当然、運転手は社員さんである。私ら小僧はきょろきょろと窓から東京見物。見るもの聞くものが初めてで楽しかったなぁ。

何回かあった日曜日には、2人で新宿へ遊びに行った。朝早くから制服を着て、ひたすら新宿をぶらぶらする。新ブラだ。昼食に安いラーメンを食べて、無料の水をしっかり飲んで、また歩くのだ。楽器屋で見たエレキギター、カメラ屋に並ぶたくさんのカメラ、そして着飾って歩いている人達。

私らはなぜ制服だったか? それは世間に見せられる洋服がなかったので、制服ならおかしくはないだろうという考えからだった。しかし、この制服が原因で大変な経験をすることになる。

ある日曜日の朝8時ぐらいだった。いつものように新ブラを始めた私達を見かけた警官に「ちょっと、君達、こっちに来なさい」と怖い顔で職務質問をされてしまった。どうも家出の学生達だと思われてしまったようだ。心臓をバクバクさせてアルバイトに来ていることなど必死に話したが、なかなか信用されず、交番から解放されるまでにずいぶん時間がかかった。新ブラに制服はだめだったのだ。

こんな楽しい1か月を過ごした最終日、金額は忘れたが給料をもらい、社員さん達に挨拶をすると、「お土産に塩を持って帰りなさい」と言われ、重くて持てないくらいの塩をもらった。10キロくらいだろうか?

なぜ塩なのかというと、その塩は昆布を漬けてあったもので、昆布の粉が混ざっている最高に美味しい塩なのだ。家に帰って家族に渡すと大喜びして、白いご飯にはもちろん、野菜の浅漬けなどに使い、美味しくいただいた。

今回このコラムを書くにあたって、この昆布屋さんを検索してみたところ、正式には「小倉屋山本」という、大阪が本社の老舗さんだった。そしてあの塩昆布は「えびすめ」という塩ふき昆布らしい。

近いうちに入手して食べてみよう。改めて小倉屋山本さんに感謝&感謝!

株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介


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