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【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~
第80回 エッセンシャルワーカー 2020年6月17日配信
今日は5月21日、緊急事態宣言から1か月以上過ぎたが、まだ解除されず自粛要請が続いている。
今年は異様なゴールデンウィークだった。
いつもなら、孫達が訪ねてきたり、奥方と温泉旅行にでも出かけたりするところだが、様子はまったく異なり、そう、ひたすらステイホームだった。
今はまさに、先の見えない新型コロナウイルスとの戦いで日本中が揺れ動いている。4月から始まっている在宅勤務と今回のステイホーム期間とが重なり、そろそろコロナ疲れが出始めてきたところである。
自宅ではパソコンに向かって仕事をする毎日である。定期的な会議や役員会などもすべてリモートワークでやっている。
遠隔地(東京、大阪、名古屋、千葉など)にいる幹部社員をネットでつなぎ、初めてWeb会議を体験したが、これは災害時も使えそうである。当初は本当に仕事ができるか懐疑的であったが、やってみるとそれなりに役立つことがわかった。
仕事以外では、公園でウォーキングしたり、DVDを見ながらラジオ体操をやったり、3日に一度スーパーへ買物に行くぐらいで、まったく刺激のない日々である。たまに会社へ出かけるとオフィス内はシーンと静まりかえり、出社しているほんの数人の社員を見かけるだけでなんとも寂しい感じがした。
この先、仕事や私生活がどのように変わってしまうのかとても心配である。
さて、前置きが長くなってしまったが、そうした中、ゴールデンウィークの数日前、大阪市にあるリハビリテーション病院で新型コロナウイルスの集団感染が発生したというニュースが飛び込んできた。
ネットによると、最初に看護士1名の感染が発覚した後130名以上の患者へ次々と飛び火して、入院していた女性などが数名死亡したと発表された。私はこの一報を聞いたとき、とうとう来るものが来たなーと思った。いわゆる院内感染というやつである。
この病院で感染がわかったのは4月中旬ごろ。しかし病院内で情報が共有されることはなく、5月には看護士やスタッフ、患者の中でも発熱していない人のほうが少ないくらいまで発症者が続出していたという。
当時病院では、全国的に新型コロナウイルスが蔓延していたにも関わらず、感染予防のマニュアルや感染者が出たときの対応策は作成されていなかったようだ。その後、陽性と判断されたスタッフをそのまま勤務させていたことが明るみに出た。
症状がない感染職員を働かせてもよいかを保健所に確認し、「感染拡大防止のためには認められない」と警告を受けていたにもかかわらず、深刻な人手不足から「やむを得ず働いてもらった」ことが大きな事件へと発展させてしまった理由である。
病院側からは当初、濃厚接触者は自宅待機との指示を出したが、人手不足の折から陰性だった人は出勤をするようにと指示を変更してしまった。こうした背景には、この病院が抱えている深刻な労働環境の問題があった。スタッフが「発熱がある」と申告しても、上から「37℃で休むのか?」と言われ、解熱剤を使い出勤する看護師や医師もいたという。何ということだ!
新型コロナウイルスの蔓延で最も過酷な状況下に置かれているのが、医療従事者の方々であろう。感染リスクを背負いながら、まさに我々のために働いている。本当にご苦労様である。
彼らが昼夜踏ん張ってくれているお陰で、私達は自宅などで家族と平穏に過ごすことができるのだ。彼らに比べれば私達は本当にお気楽なものだと思ってしまう。
ソファに座り星野源の曲を聞きながら、ただ愛犬と戯れているだけでいいのだ。やれマスクが不足しているとか、手洗いだとか、3密に注意とか、ソーシャルディスタンスに気を付けるとか色々言ってはいるものの、他の人達のためには何一つ行動していない。
今回のニュースで知ったのだが、医療従事者のように、我々の生活を維持するため欠くことができない人達のことを「エッセンシャルワーカー(Essential Worker)」と呼ぶらしい。私も初めて聞いた言葉である。
「エッセンシャルワーカー」には、医療従事者以外にもたくさんの職業の方々がいる。
ちょっと思い浮かべただけでも、毎日ゴミを収集してくれる清掃員、常に3密や濃厚接触の可能性があるスーパーのスタッフの方々、保健所の職員、毎日休めない郵便局の配達員や荷物を配送するドライバー、コンビニやドラッグストアで働く店員、バスや鉄道の運転手、タクシードライバー、学校の教師、警察官、警備員など、どの職業をとっても直接我々の生活基盤を支えている人達ばかりである。
もし彼らが仕事を止めてしまったら、途端に我々の生活や仕事は成り立たなくなる。在宅勤務やリモートワークなどといった選択の余地もなく、常に大勢の人と対面で接しリスクを背負いながら働いているのである。
このコラムが配信されるころには緊急事態宣言が解除されていると信じているが、それまでの間、我々はエッセンシャルワーカーの方々に極力迷惑がかからないよう注意を払うべきであろう。
しかし報道によると、コロナ疲れのためか、それとも中毒からか、開いている遠くのパチンコ店へ駆けつける人までいるらしい。
ライブハウス、スポーツジムなどもクラスターの可能性が最も高いところであり、医療崩壊を起こさないためにも今は極力避けるよう「正しく恐れる」べきである。そうしたことが今、エッセンシャルワーカーの方々に対して我々ができる一番のリスペクトであろう。
不用意に行動すれば、自分の家族や仲間にもうつしてしまう可能性だって十分あり得る。
そうした結果、本来我々を助けてくれるはずのエッセンシャルワーカーを逆に窮地に陥れてしまうことを絶対忘れないようにしたい。
株式会社インターコム
代表取締役会長兼社長 CEO 高橋 啓介
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