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【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~
第73回 ラグビー型の社会「ONE TEAM」 2019年11月20日配信
10月13日に「ラグビーワールドカップ2019日本大会」の日本対スコットランド戦をテレビで観た。
この試合の視聴率はなんと53.7%を記録したそうである。
試合が行われた横浜の日産スタジアムは台風19号の影響で開催が危ぶまれたが、終わってみれば、日本チームが28対21で辛くも逃げ切り、4勝全勝、勝ち点19として日本のラグビー界に金字塔を打ち立てた。(このコラムをリリースするころは、優勝チームは決まっているだろう)
今回はホームでの試合だったので、横浜スタジアムには何と6万7千余りの観客が詰めかけたそうだ。我が家では大型テレビの前に奥方と二人だけのパブリック・ビューイング(?)と洒落込み、ビール片手に試合が終わるまで2時間余り興奮しっぱなしだった。
「いけっー、いけっー」「そうっー、そうっー」「やばいー、やばいー」とか、まるで実際にスタジアムで観戦しているかのようなノリで、ゲームにのめり込んだ。
1~2か月前に観たテレビドラマ『ノーサイド・ゲーム』の影響もあり、ちょうどラグビーに興味が湧き始めたところだった。正直、まだルールも理解していない「にわかファン」ではあるが、急に面白みが湧いてきたところである。
ところで、この日本代表、「勇敢な桜戦士」と呼ばれているそうだが、他のスポーツチームと比べて何か違うような気がしてならない。
皆さんはどうでしょうか? そんな感じ持ちませんでしたか?
初めて彼らを見たとき、正直言ってこの日本代表は外国籍のチームではないかと見間違えるほど違和感を覚えた。想定を超える外国人選手が含まれていたからだ。ラグビーの知識に乏しい私は、W杯で最高の結果を出すため、海外から大勢の助っ人をスカウトし最強メンバーを作り上げたとばかり思ってしまった。
31名中15名までが海外からの出身者である。ヘッドコーチのジェイミー氏まで含めると半分以上だ。出身地はニュージーランド、南アフリカ、韓国、トンガ、オーストラリア、サモアなどである。
ラグビーの場合、外国人が代表選手になれる条件は、(1)出生地がその国であること (2)祖父母や両親の内の1名がその国の出身であること (3)その国に3年以上継続して居住していること (4)通算で10年にわたり居住している、のうち1つでもクリアしていればいいことになっている。
つまり住む場所でその国の代表選手になる資格が与えられているという訳だ。
メンバーは長年日本でプレイしているらしく、ほとんどの選手が日本語に堪能である。帰化している選手も15人いる。試合の時は全選手が「君が代」を斉唱するほど日本に溶け込んでいる。顔カタチが違っていても精神はまさに日本人なのだ。
余談になるが、今回のチームの中に2015年W杯で活躍したあの五郎丸選手の姿が見えなかった。どうしたのだろう?? ゴールキック前のあの「五郎丸ポーズ」をもう一度見たかっただけにちょっと残念である。
さて、私は今回の日本代表チームから、我々のような分野にも、何か役立てるヒントが隠れているのではないかと思った。
IT業界ではかなり前から慢性的な人材不足に悩まされている。特にパッケージソフトやクラウドを生業とするベンチャーには、エンジニアの確保は死活問題である。
当社は4年前に千葉県の南房総に子会社を設立した。
本社で賄えない顧客サポートやソフト開発を請け負うためである。コールセンターは順調に立ち上がったが、開発はエンジニアが集められず苦戦を強いられる。
もともと地方にはIT企業が少なく人材の確保は難しい側面があった。地元の高校生は都市部にある大学や専門学校に進学し、そのまま東京などに居ついてしまう。そんな理由からIT企業がなかなか根付かない。一方で世の中はネット時代である。ネットを活用すれば、地方にいながらにして東京と同じ仕事が可能である。
なので、地方でのビジネスを成功裏に導くには、地元で働けるエンジニアの確保が急務なのである。
つい最近、自治体の協力を得てエンジニアを募集したところ、なんと日本人が5名と、日本の語学学校に通っているネパール、ベトナム、カザフスタンなど外国人からも10名の応募があった。韓国からは40名を超える大学生も会社見学に来た。
なぜ彼らが地方企業に興味を持ったか訪ねてみると、「東京などでは外国人の求人が少ない」「自国では経済が悪いため就職口が見つからない」「自国ではIT企業そのものがまだ少ない」「10年後を見つめてまず日本でノウハウをためたい」とのことだった。
想像以上の応募だったが、期待が高まる半面、こうした外国人の雇用には問題がない訳でもない。
数十年前、日本中がバブル景気で沸いていたころ、未曾有の人材不足から当社でも外国人を採用したことがある。内訳は韓国人が6名、中国人が4名、台湾人が1名、イギリス人が1名の計12名だったと記憶している。
当時は今以上に人材の確保が困難で、ITの経験がなくても、また日本語が喋れなくても日本人の穴埋めとしてかなり無理して雇い入れた。当然、日本人と異なり、一人前のエンジニアになるまでかなりの時間を要した。
外国人は仕事でもプライベートでも言葉が通じる者同士や同じ国の仲間だけで固まる習性があり、日本人とコミュニケーションを取ることが苦手だった。
しばらくするとフラストレーションが溜まり、不満が出始め、入社時の意欲やモチベーションも徐々に失われてしまった。その結果一人辞め、また一人辞め、結局、3~5年ほどで全員が退職してしまうという苦い経験がある。
今後、日本に仕事を求めて多くの外国人がやってくる。
この状況は、もしかしたら人手不足に陥っている我々にとって大きなチャンスなのかも知れない。しかし、もし彼らと一緒に働くなら我々も変わる必要がある。
外国人の雇用は、日本で働きたい彼らより、それを受け入れる側の考え方が重要になろう。国籍がどうだとか、日本語ができるとかできないとか、外国人だから安い労働賃金が当たり前とか、知識が薄いとか、すぐに辞めて自国に戻ってしまうとか、彼らを受け入れる側が最初からこうした考えだと決してうまくいかない。
彼らを同じ「仲間」として受け入れ、信頼しリスペクトしていかなければ、文化や生活様式がまったく異なる彼らとの共同作業はうまく進められないだろう。
ラグビーの日本代表のように、メンバー全員が、「ONE TEAM」の精神で受け入れていく必要があると思われる。
株式会社インターコム
代表取締役会長兼社長 CEO 高橋 啓介
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