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【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~
第31回 油断は大敵 2016年5月18日配信
私の趣味はサックス(サクソフォン)である。
今回のコラムは演奏ではなく、サックスという楽器について書こう(私のサックス記については別の機会に)。
サックスは、セクシーな音色といい、形状といい、ゴールドの色合いといい、なにかとてもJazzyな雰囲気を醸し出すアダルト風な楽器だ。
この楽器は、マウスピースとリード以外すべて金属部品でできている非常に精密な金管楽器である。そのため、ぶつけたり倒したりすると途端にキーが曲がったり音の調子が悪くなったりする。
また、サックスには管の一番太い「ベル」と呼ばれる表面に手彫りの美しい彫刻が施されていて、これがなんとも粋である。一般にこれはオプションでサックスの購入時に注文して彫ってもらう。彫刻があるものを使っているだけで、なんとなくプロのミュージシャンにでもなれたような気分になるから不思議である。
私がサックスを始めたのは5~6年ほど前である。最初にフランスのセルマー製のアルトサックスを購入し、その後、日本のヤマハ製のソプラノサックス、ヤナギサワ製のアルトサックスとソプラノサックスを買い足して、今では計4本所有している。
4本持っていればもう十分と思いきや、最近ではヴィンテージもののアルトまで欲しくなってきた。演奏の方はまったく上達していないが、更に上位機種を目指す「大人の贅沢病」だけは未だに健在である。
サックスのメーカーは、セルマーが世界最高峰のブランドとして君臨している。
日本ではヤナギサワが随一のサックス専業メーカーとして、世界的にもたくさんのファンを持っている。ヤマハも総合楽器メーカーとして、長年サックスの生産を手掛けている。吹奏楽ファンをはじめ、初心者からプロまで幅広く使われおり、世界でも有数なブランドとしてその名が通っている。
今では両メーカーとも、セルマーに勝るとも劣らない品質で世界中のファンから高評価を得ているとのことだ。
私は、サックスは日本メーカーとセルマーの3社が世界を席巻していると思っていたが、このごろ、楽器屋さんを覗くと、今まで見たことがないメーカーの製品が大量に陳列されていることに気が付く。値段もセルマーや日本製のものに比べるとはるかに安い。店員さんに聞いてみると、その多くが台湾製や中国製のものとのことだ。
私もこれにはちょっとビックリした。サックスに造詣が深く歴史も長いアメリカやヨーロッパ辺りなら、「あーっ、そうか!」と素直に納得もできるが、半導体やPCなどの工業製品や家電などを得意としている台湾や中国の新興勢力が、こうした分野にまで進出していることに、驚きと少々の違和感まで持ってしまった。
たぶんそれは、私がIT業界に身を置いているからそう思えるのかも知れない。しかもサックスは、彼らが得意とする大量生産型のデジタル製品とは真逆な少量生産型のハンドメイドで作られたアナログ製品である。彼らがこうした一品モノで、しかもアーティスティックな楽器を生産していることに、失礼ながら、かなり色眼鏡で見てしまった。
台湾製と中国製のサックス事情について調べてみるとこれがまた驚きの連続である。
まず台湾は、サックスの生産量がなんと世界第1位で、しかも世界シェアの60数%を握っているとのことだ。さらに台湾には20社ものサックスメーカーが存在していて、台中市にある后里区という街にはその内の15社が集結しているとのこと。それに比べると日本には2社だ。
私も一度、ジュピターとカドソンという台湾製のサックスを試奏させてもらったことがあるが、特別に音色が悪いとか、使い勝手が良くないといった感じはまったくなかった。逆に高い音が素直に出せて、演奏もしやすく、意外と優れた面がたくさんあったように記憶している。
店員さんによると、こうした製品は、以前であれば販売を代理店に任せるOEM(相手先ブランド)生産が多かったが、近ごろでは自社ブランドで勝負できるまでに品質が上がってきたとのことだ。コストパフォーマンスが優れているので初心者や学生さん向けに勧めやすいとも話していた。
また、彼らはユーザーの目を引き付ける面白い工夫もしている。サックスの色合いをわざと古めかしく塗装してヴィンテージ風のものを売り出したり、たぶん中国製だと思うが、我々サックスユーザーの間では神様・仏様と謳われている、あの天才プレーヤーのKenny Gの名前をそのまま冠した「Kenny Gモデル」というブランドのソプラノサックスまで生産しているメーカーもある。
このモデルが売れると、Kenny G本人にもライセンス料が入るらしいが、私のようなKenny Gの大ファンから見ると、製品の良さより、有名プレーヤーの名前を利用して販売していることに少々腹立たしさを感じてしまう。こうしたところはいかにも新興ベンチャーらしい。
そのKenny G本人がいつも愛用しているサックスというと、ソプラノもアルトもテナーもみなセルマー製とのことなので、何とも笑ってしまう。
世界ブランドのヤナギサワは、社員が100名にも満たない町工場のような小規模な会社である。台湾にあるメーカーもほとんどが社員数人~数十人の町工場規模の会社である。たぶん、中国や他の海外勢も同じような規模の会社だと推測する。
しかし日本の2社に比べれば、特に台湾では20社ものメーカーが激しい競争の中に身を置いて切磋琢磨しながら製品を作り出している。また積極的に海外進出も果している。品質も徐々に世界や日本品質に近づいている。しかも価格はまだまだかなり安目だ。
こうしたところから、これまで世界を席巻していたセルマーも、また日本の2社も決して「安閑」とはしていられない状況だろう。彼らが対等に競合してくる日も間近いように感じる。
今、大声で言いたい。「がんばれ日本メーカー!」と。
株式会社インターコム
代表取締役会長 CEO 高橋 啓介
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