【コラム】『ロマンとそろばん』~ソフト会社CEOの独り言~

第5回 芸は身を助ける 2014年3月19日配信

今回は少しビジネスのことから離れて趣味のことに触れてみたい。

会社を始めてから30年ほど経つが、最近まで趣味らしい趣味はほとんど持っていなかった。毎日が自宅と会社の往復だけだった。いつか会社をリタイヤするときが来るが、今のままでは何も残らない。将来がちょっと不安だ。

10年ほど前に、奥方と一緒に始めたバラのガーデニングがある。満開になれば「バラと酒の日々」に例えて、近所の人や友達と庭先でワインを飲むのは楽しい。しかし、これは春先だけの楽しみで、1年を通してできない。

随一の趣味だったゴルフは数年前にやめてしまった。休日や会社帰りにあれだけやっていたのに、今は皆無だ。今さら、やめてしまったゴルフを復活させるほど気力も体力も腕も残っていない。

ということで、最近までそれに代わる趣味をずーっと探していた。1人でもグループでも退職した後も楽しめる本格的な趣味が何か1つぐらい欲しいものだ、と思っていたらそれは音楽(SAX:サクソフォン)だった。

音楽といえば高校時代にやっていたエレキギターぐらいだ。これなら昔とった杵柄で、もしかしたらまだできるかも知れない。昔買えなかった憧れの「フェンダー」や「ギブソン」や「モズライト」のエレキも今は買える年齢になった。道具だけならいつでも揃えられそうだ。それが今のシルバーの特徴だと、テレビでもやっていた。

しかしエレキは、還暦を過ぎるとちょっときまりが悪い。たぶん昔やっていた曲がベンチャーズやビートルズだったからだろう。楽器店に行くと、私と同世代の人がお試しコーナーで自慢げにエレキを弾いている。懐かしさはあるが、やっぱり自分には何となく気恥ずかしさが残り、これは無理だと思った。

SAXを始めたのは、BCNの奥田会長(当時は社長)がチェロを演奏している1枚の写真を新聞紙面で見て、自分も何かを!と思い楽器を探し始めたことがきっかけだ。演奏している姿からは、プロのチェリストが弾いているようでかなりいけている感じがした。

早速楽器屋に行き、どんな楽器がいいのか悩んでいると店員さんが「お客さんは体型から見て管楽器が似合いそう」との強い薦めでSAXを選んだ。しかし何となく理由は面白くない。「体型で楽器を選ぶな!」と言いたい。ブラスバンドで、先生から体格のいい学生が「君は身体が大きいからトロンボーンとかドラムがいいんじゃないか!」と言われるのと同じだろう。

今、1週間に1度レッスンに通っているが楽しくて仕方がない。ここで若い先生に就いて、中学のときに習ったことがある楽譜の「いろは」から始めて、SAXの基礎練習や腹式呼吸なども教えてもらっている。毎回汗だくだくになり、なかなか健康維持にも良さそうだ。

最初は楽譜が読めなかったが、4年近く経った今は何とか少し読めるところまできた。海外の音楽サイトからBacking Track(カラオケ)やスコアを購入して、それに合わせて曲が弾けるようにもなってきた。最後の仕上げはライブだがこれまで1回だけ挑戦したことがある。緊張のあまり手足が「ガタガタ」震えて止まらなかったが、とてもエキサイティングな時間を過ごせた。

最近、米国あたりから「デジタル・デトックス」という言葉が聞こえてきている。ITやデジタル機器から少し離れて趣味やスポーツなどを楽しもう・充電しよう、ということらしい。自分もそうしたいのだが、会社では朝から帰るまで、ほとんど毎日パソコンを操作している。通勤時も毎日といっていいほどタブレットで日経を読んでいる。自宅に帰ってからも練習のためパソコンを触る。思えば本当に毎日がIT漬けの生活だ。ソフト会社で働いていると、IT漬けは仕方がないかも知れないが、これはちょっと行き過ぎじゃないかと心配するときもある。

音楽をやれば少しはパソコンから離れて趣味に没頭できるのかと思いきや、それは大きな間違いだった。これは後でわかったことだが、最近の楽器の練習やライブは、ほとんどがパソコンやタブレットを利用して演奏するらしい。人によっては、楽譜までも紙ではなくタブレットにデジタル化しておき、その画面を見ながら演奏する人もいるとのこと。

若い社員に教えてもらったのだが、私も最近、ミュージックインターフェースをパソコンに繋ぎiTunesでBacking Trackを聞きながら、それに合わせて練習するようになった。これが今風のやり方らしい。繰り返し練習するにはCDなどを使うより便利だ。上手く吹けるようになれば、録音した音や画像をYouTubeやFacebookにアップして友人に聞いて貰える楽しみもある。こうなると音楽演奏の場合は、ITの活用を避けることはできない。「デジタル・デトックス」もなかなか難しい。

ゴルフもそうだったが、音楽でもスポーツでも趣味は日常忙しいほど夢中になれると思う。時間がないときほど、空いた時間を探して、自分の好きなことへ打ち込む方が充実した時間を過ごせるような気がする。

以前は、もしリタイヤしたらゴルフ三昧と思っていたが、たぶんそれは時間が余りすぎて無理だろう。でも音楽だったら可能性は十分だ。今ではSAX三昧を楽しみにしている。

最近はビジネスを長く続けて行くため、趣味は必要不可欠だと思うようになってきた。SAXが生計を助けることはないが、精神面や健康面で大いに「芸は身(ビジネス)を助ける」ことは確かなようだ。

お酒のお付き合いだけじゃつまらない皆さん、ご一緒に音楽でもいかがですか?

株式会社インターコム
代表取締役社長 高橋 啓介


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