バージョン管理とは? 方法やシステム導入のメリット、注意点を解説
バージョン管理とは、ファイルの変更履歴や変更内容などを記録し、管理することをいいます。ビジネスシーンでは1つのファイルを複数人で更新することが多く、更新を繰り返すうちに最新ファイルがわからなくなることも珍しくありません。そのためバージョン管理の必要性を理解している人も多いでしょう。
そこで本記事では、バージョン管理の概要や対象とすべきファイル、管理の具体的な方法、管理システムの方式、機能のほか、システム導入のメリット、注意点について解説します。
バージョン管理とは、ファイルの変更履歴や変更された内容を管理すること
バージョン管理とは、ファイルの変更履歴や変更された内容を管理することです。「いつ」「誰が」「何を変更したのか」を管理することで、クライアントや社内関係者などの複数人のあいだでファイルを共有したいときに役立ちます。
例えば、「画面設計書」というファイルを作成したときに、「画面設計書_ver1.1」といったようにファイル名にバージョンの数字を追記して、内容を更新するごとにバージョンの数字も更新していくのです。関係者全員が同一のルールでバージョン管理をすることで、最新のファイルを迷わず探し出せるだけでなく、トラブル発生時の原因究明や素早い復旧にも役立ちます。
バージョン管理の対象とすべきファイル
バージョン管理が必要となるファイルについては、特に決まりはありません。複数人で共同作業をするファイル全般が、バージョン管理の対象になります。例えば、ドキュメント、画像、音楽、動画など様々なファイルで、共同作業を行う場合はバージョン管理を導入したほうが適切に作業を進められるでしょう。
もっとも、ほかのファイルよりもバージョン管理の必要性がより高いファイルもあります。変更頻度が高く、過去のバージョンを参照することが多い下記のようなファイルでは、特にバージョン管理が重要です。
種類 | 特徴 |
---|---|
ソースコード | ソフトウェアのプログラム内容が書かれたファイル。構築時に変更が多く加えられるため、バージョン管理の必要性は高い |
ビルドスクリプト | ソースコードを元に実行する処理・操作の手順が書かれたファイルであるため、ソースコードと同様にバージョン管理が重要 |
バージョン管理の方法
一般的に、バージョン管理では、作成者・作成日時といったファイル作成情報と、更新者・変更履歴・コメントといったファイル更新情報の2種類の情報を記録します。
ファイル名にバージョン情報を明記して別データとして保存するだけでも、バージョン管理は可能です。例えば、ファイル名を「230101(日付)_◯◯(ファイル名)」「◯◯(ファイル名)_ver.1.1」といった名称にして、変更があるたびに随時ファイル名を変更して保存していきます。
しかし、複数人でファイルを編集する場合、ルールを共有しても正確にバージョン管理ができないケースがあります。そのため、変更履歴をサーバーなどに保存する「バージョン管理システム」を導入することが一般的です。バージョン管理システムでは、ファイルの変更履歴を「リポジトリ」という専用の保存場所に自動保存します。これによりファイル更新者は、特に意識をしなくてもリポジトリに保存するだけで、最新のバージョンを別途保存できるのです。
バージョン管理システムの方式
バージョン管理システムは、管理の方法によって大きく「集中管理方式」と「分散管理方式」の2つに分かれます。それぞれ、下記のような特徴があります。
集中管理方式
集中管理方式とは、リポジトリを1つの専用データサーバーで一元管理する方式です。ユーザーが変更したファイルをサーバーにアップロード(チェックイン)して保存すると、自動でバージョン(リビジョン番号)が加算されます。また変更を加えるときは、サーバーからファイルのコピーをダウンロード(チェックアウト)して作業を行います。チェックインするたびに自動でリビジョン番号が更新されるため、共同作業でもファイルが上書きされることはありません。
サーバーに変更履歴を直接記録することから、次の項目で解説する分散管理方式と比べて、シンプルな運用が可能です。しかしサーバーに接続していない状態ではファイルの更新はできず、1人がチェックアウトしているときはほかのメンバーが編集できないといったデメリットがあります。そのため近年は、オフラインでも利用できる分散管理方式が主流になってきています。
分散管理方式
分散管理方式とは、ユーザーの端末内にリポジトリのコピーを作成し、一時的にローカルで変更内容を保存する方式です。サーバーも存在しますが、サーバーのリポジトリへの保存は、ユーザーの端末での作業がある程度進んだ段階で行います。そのためオフラインでもファイルを編集できるのがメリットです。
また、ほかのメンバーが編集したファイルを上書きしようとすると警告が出るため、誤操作を防げるでしょう。分散管理方式のブランチ機能
分散管理方式のバージョン管理システムでは、「ブランチ」という機能が搭載されているという特徴があります。ブランチとは「枝」という意味で、変更履歴の保存を「機能追加用」「バグ修正用」といったように分岐させることが可能です。それぞれのブランチは独立しているため、異なるブランチ同士の更新内容は反映されません。そのためAさんは「機能追加用」、Bさんは「バグ修正用」とブランチを分けることで、同時並行で作業を進められます。最終的に各ブランチの作業が完了したら統合(マージ)し、1つのファイルが完成するのです。
ただし、ブランチの操作は複雑なことが多く、担当者全員がルールや特性を理解していなければスムーズに運用できないというデメリットもあります。特に、長期間ブランチを分けたままマージしないと、競合が起こる可能性が高く、その場合は競合している変更点のうちどれを残すのかを逐一判断しなければならなくなるため、注意が必要です。
バージョン管理システム導入のメリット
バージョン管理システムを導入すると、人為的なミスを防ぎ、スムーズに共同作業の管理ができるようになります。バージョン管理システムならではのメリットとしては、下記の3点が挙げられます。
過去のバージョンに簡単に戻せる
過去のバージョンに簡単に戻せるという点は、バージョン管理システムのメリットです。ファイルを編集していると、誤ってソースコードを修正したり、削除したりしてしまう可能性があります。手作業でバージョン管理をしていると、戻りたいバージョンのバックアップファイルが見つかればすぐに修正できますが、バックアップファイルが見つからない場合は完全に復元できないかもしれません。
バージョン管理システムを利用すると、大幅な変更で問題が発生しても、簡単な操作で問題が発生する前のバージョンに戻せます。また、バージョンごとに変更した内容を表示できるため、どのバージョンに戻るべきかが判断しやすくなるという点もメリットです。
問題点を見つけやすい
バージョン管理システムのメリットは、問題が起きたときに原因を発見しやすいという点です。バージョン管理システムでは、「誰が」「いつ」「どこに」「どのような変更を加えたか」が自動で記録されます。そのため開発したプログラムに異常動作やバグなどの問題が起きたときに、何を変更してその問題が発生したのかを簡単に調査することが可能です。
例えば、プログラムにバグが発生したとき、原因を特定するために「ver3.1」と「ver3.2」で動作テストをします。「ver3.1」で問題なく動作し、「ver3.2」で異常動作が起これば、「ver3.2」への変更によりバグが発生したと特定できるのです。原因となった変更を特定できれば、その箇所のみを修正することも可能です。原因解明からバグの修正まで、スムーズに対応できるでしょう。
安全に共同編集ができる
バージョン管理システムの導入により、安全に共同編集ができるようになるという点もメリットです。システム開発では、複数人で作業をすることが一般的です。共同作業は効率的ですが、意図せずほかの人のファイルを上書きしてしまったり、問題が発生したときに誰が変更したのかを特定しにくくなったりする恐れがあります。
また誤って古いバージョンを編集し、デグレードを起こすことも珍しくありません。デグレードとは不具合やバグが復活して低品質になることをいい、より過去の状態に戻ることから「先祖返り」ともいわれます。すでにユーザーに公開しているソフトウェアでデグレードが起きると、企業の信用が下がる可能性もあるため注意が必要です。
バージョン管理システムを導入すると、リポジトリに更新したファイルが別途保存されるため上書きの心配がなく、問題発生時にもすぐに変更内容を探して修正できます。また、最新ファイルが明確になるため、デグレードを起こすリスクも低減できるでしょう。
バージョン管理システムを導入する際の注意点
過去のバージョンを管理できるなどメリットの多いバージョン管理システムですが、必ずしも簡単に導入できるわけではありません。導入時には、下記2点に注意が必要です。
担当者が使いやすいシステムか確認が必要になる
バージョン管理システムは、担当者が使いやすいシステムを選ぶことが重要です。ファイルのバージョン管理機能だけでも、システムによって、変更したファイルの保存を自動で行うか、手動で行うかといった違いがあります。一見すると、自動的に保存されるほうが使いやすいように思われますが、保存するタイミングを自分で選びたいという担当者もいるかもしれません。担当者にとってバージョン管理システムが使いにくいと、開発作業をするたびに小さなストレスが蓄積するでしょう。
また、使い方が担当者にとってわかりづらく、適切に操作ができない場合には、正しいバージョン管理ができなくなることも考えられます。検討中のサービスに無料の試用期間が用意されている場合は担当者に実際に使ってもらって意見を聞き、効率的に使えるシステムかを確認することが必要です。
操作方法を浸透させるのに時間がかかる
社内に新しいシステムを導入するときは、どのようなシステムであっても、担当者に操作方法を伝え、習熟してもらう必要があります。中でもバージョン管理システムは、機能やルールをよく理解しなければスムーズな運用ができず、最終的な目的である適切なバージョン管理ができなくなってしまうため、担当者への教育が重要です。
例えば、分散管理方式のシステムでは、ローカル端末内にあるリポジトリを定期的にサーバー上のリポジトリに反映させる作業を習慣的に行えるようになる必要があり、ブランチ機能を使う場合はどのようにブランチを設定するのかを覚えなければなりません。ほかにも、バージョンの復元操作にも慣れておかなければ、スムーズに作業を進められないでしょう。
担当者のうち1人でも操作方法を知らないまま使うと、現場が混乱することが予想されます。担当者それぞれに操作方法やルールを伝え、浸透させるまでには時間がかることから、急ぎのプロジェクトにバージョン管理システムを導入するのは避けるべきです。
バージョン管理システムで、安全にプロジェクト管理を行おう
システム開発や大規模プロジェクトでは、バージョン管理システムで安全に運用することが重要になります。バージョン管理システムを利用すると、変更履歴を適切に保存して確認できるようになり、安全かつ効率的に共同作業をすることが可能になるため、積極的に活用していきましょう。
さらに安全にプロジェクト管理をするには、機密情報の漏洩や未発表情報のリークなどへの配慮が欠かせません。そこでお勧めなのが、情報漏洩対策・IT資産管理ツールの「MaLion」です。MaLionでは情報漏洩対策のための機能として、セキュリティポリシー設定やポリシー違反者への警告通知、アプリケーションID監視、外部デバイス監視、送受信メール監視、ファイルアクセス監視、Webアクセス監視、個人情報ファイル制御などの利用が可能です。
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