売掛金の消込業務の効率化を主目的とした
振込データに商流情報を付加するための仕組みづくり
企業間の決済は一般的に1か月単位でまとめて処理されます。支払企業は銀行振込を通じて月次の支払い処理を行います。受取企業には通知とともに銀行口座に決済金額が入金されます。この際、受取企業では月次の総入金額に対して具体的にどの受注案件の金額が含まれているのか、売掛金との照合作業を行います。この“売掛金の消込業務”にこれまで受取企業は多くの手間や時間を費やしてきました。
さらに照合の結果、売掛金と入金額が合わないようであれば支払企業に対して問い合わせを行うこともあります。そのため支払企業においても、このような問い合わせへの対応に負担が生じる場面がありました。
プラットフォームがZEDIに切り替わることで、総合振込において“支払通知番号”“支払通知発行日”“請求書番号”などの取引に関する情報を支払企業側から受取企業側に対して送付することが可能となります。
取引に関する情報(商流情報)が振込データに付加され、商流情報を基にした照合作業の自動化用途に活用することで、売掛金と入金額の照合作業が効率化される上にヒューマンエラーの回避にもつなげることができます。
ちなみに銀行業界では、これまでも銀行振込を通じた企業間決済の高度化(振込データに商流情報を付加する仕組みづくり)に対応するための検討/実施が進められてきました。現状の振込データ(固定長電文)にも取引に関連する情報(EDI情報)として20桁の番号(マッチングキー)を付加できるようになっています。ただ20桁という項目長の短さや、導入当時(1996年)、支払明細データの交換がそれほど普及していなかったこともあって実際にはほとんど浸透していません。
ZEDIでは、企業と銀行間の電文形式としてISO 20022(金融通信メッセージの国際規格)に準拠したXML電文の利用が規定されています。データ項目の内容や長さを自由に設定でき、柔軟性や拡張性を備えたXML電文であれば、項目長の制約が回避され取引の特定に必要となる情報を十分に盛り込むことが可能となります。
全銀システムを経由し、支払企業と受取企業の間でXML電文の送受信を可能にするZEDI
ZEDIでは、支払企業/受取企業のそれぞれにおいてXML電文の送受信を可能にしますが、銀行間(仕向銀行⇔被仕向銀行)の送受信は従来通り全銀システムを通じて行われます。
支払企業が総合振込情報をXML電文で送信すると、ZEDIが受信データからEDI情報部分を格納し、振込情報と紐付けるためのキー情報を生成します(1)。振込情報を固定長電文に変換し、キー情報を付加して仕向銀行に送信します(2)。仕向銀行から被仕向銀行までは、全銀システムを通じて固定長電文で送信されます(3,4)。被仕向銀行から受取企業へ送信される際に再度ZEDIを経由し、ここで格納してあったEDI情報を、キー情報を基に振込情報にセットします。次に固定長電文からXML電文への変換を行って受取企業へ送信します(5,6)。ちなみに支払企業/受取企業とZEDI間の送受信プロトコルには、主に消費財流通業界で実績のあるJX手順が採用されています。
ZEDIを活用したFB(ファームバンキング)による振込データの送受信フロー
※上記以外に、ZEDI対応の法人インターネットバンキングを通じた送受信(XML電文のWebアップロード/ダウンロード)方法があります。Webブラウザー上から振込用のXML電文を簡易的に作成できる専用サイト「S-ZEDI」が公開されています。共同実証でも証明されたZEDIの活用メリット
ZEDIの活用メリットは、受取企業がこれまで多くの手間や時間を費やしてきた売掛金の消込業務を大幅に効率化できる点にあります。効果の一例として、2014年および2015年に複数の金融機関、小売、卸、物流会社が参加して行われた共同実証実験の結果※1 をご紹介します。
まず卸/メーカーによる売掛金入金管理業務の実証実験では、大手卸売企業が手動で行っていた支払データと実際の入金金額の照合作業について、拡充されたEDI情報を活用して処理を自動化することにより、年間1,860時間の削減効果につながることが試算されました。また物流事業者による売掛金入金管理業務の実証実験では、大手物流企業が入金金額の内訳を取引企業ごとに入手し、手作業で請求データとの照合作業を実施していたものが、EDI情報を活用することで90%以上の請求データとの照合に関して自動処理できることが確認されました。働き方改革の必要性が叫ばれる今日ですが、ZEDIの登場は、会計/経理業務における働き方改革の一翼を担っていると言えそうです。
※1流通BMSによる決済情報と商流情報の連携の検討について【2014共同実証】【2014共同実証Ⅱ】(一般財団法人流通システム開発センター)より。「Biware」が実装するZEDI対応機能とは
さてここからは、ZEDIの稼働にあたり「Biwareシリーズ」が提供する機能についてご紹介します。
大きく(1)XML電文作成/変換機能、(2)通信機能、(3)クライアント証明書管理機能の3点となります。
Biwareが実装するZEDI対応機能
-
1.XML電文作成/変換機能
ISO 20022に準拠したXML電文の作成を行います。固定長、CSVなど様々な形式のデータとXML電文の相互変換を行い、会計ソフトなどの業務アプリケーションや基幹システムとのデータの受渡しを支援します。
-
2.通信機能
JX手順による通信機能を提供します(暗号化通信プロトコル:TLS1.2)。現在日本国内におけるJX手順の採用実績としては、消費財流通業界における「流通BMS」が最も有名です。「Biware」のJX手順は、この流通BMSの技術仕様に適合した信頼性の高い通信機能です。その他、送受信における通信制御情報(BAH)の生成/付加などZEDIで規定された送受信の仕様に対応します。
-
3.クライアント証明書管理機能
ZEDIに接続する際に必要となる認証ファイルの取得、および更新機能を提供します。クライアント証明書の有効期限が2年(730日)となっており、有効期限のチェック機能や期限到来前に有効期限を通知する機能にも対応します。
業務システムとの連携から
FBソフトウェアへの組み込みまで様々に活用
最後に、ZEDI接続における「Biwareシリーズ」の活用ケースについてご紹介します。
大きく(1)ユーザー企業が社内の会計システムなどと連携して活用するケース、(2)ソフトウェアベンダーがFBソフトなどの自社製品にミドルウェアとして組み込み提供するケースの2点となります。
ZEDI接続におけるBiwareの活用ケース
- 多様な活用ケース
-
1.ユーザー企業が社内の会計システムなどと連携して活用するケース
支払/受取企業の業務システムにFB機能を実装している場合、ケース1のように通信/電文作成変換機能として「Biware」をご活用いただけます。業務システムとの様々な連携手段をご用意していますが、例えば、あらかじめ指定したネットワーク上のフォルダーを定期的に監視するフォルダー監視機能を利用すれば、CSVファイルなどを媒介として簡単に相互連携を実現できます。
2.ソフトウェアベンダーがFBソフトなどの自社製品にミドルウェアとして組み込み提供するケース
ケース2は、FBソフトや会計ソフトのベンダーが自社製品の通信/電文作成変換機能として「Biware」を組み込んで支払/受取企業にご提供いただく場合のイメージです。各種APIをご用意しており、「Biware」をベースにした独自の業務ソフトウェア開発に活用できます。
インターコムではZEDI対応に向けた「Biwareシリーズ」の開発を順次進めております。今後の商品リリースにぜひご期待ください。
Biwareシリーズ ZEDI対応製品
商品 | 対応予定時期 | URL |
---|---|---|
対応済 | ||
対応済 |
- 参考資料
-
- 日銀レビュー 企業間決済の高度化に向けた銀行界の取組み-「企業決済高度化研究会」の設立を受けて (2011年8月、日本銀行決済機構局)
- 流通BMSによる決済情報と商流情報の連携の検討について 【2014 共同実証】実証内容、結果、今後の課題 (2014年12月、一般財団法人流通システム開発センター)
- 流通BMSによる決済情報と商流情報の連携の検討について 【2014 共同実証Ⅱ】実証内容 (2015年3月、一般財団法人流通システム開発センター)
- 全銀EDIシステム周知・広報用チラシ (2018年1月、一般社団法人全国銀行協会)
- 全銀EDIシステム(ZEDI)の 開発状況について (2018年1月、一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク)
- 決済事務の効率化に向けた全銀EDIシステムの利活用について(2018年1月、一般社団法人全国銀行協会)
- 全銀EDIシステムのご案内(2018年4月、一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク)
- S-ZEDIチラシ(2018年6月、一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク)